さてさてさーて。
10月から始まるインボイス制度の対応を前にして、こんな相談をいただいた。
建設業のボスが抱える1人親方達に支払う際に、請求書を受けとる代わりに「支払明細書」を送る事があり、支払明細書によって仕入税額控除の根拠資料としたい。との事だ。
これは、受発注だけでなく、工数や人工計算が苦手なスペシャリストを抱える管理が出来るボスの場合には、仕事を請け、計算しその通知を持って請求書を受領した事にするという場合に生じるみたいである。
こういう発注の仕方も、一つの工夫であって、癖の強い職人を抱えるという事は、自由度を増やしたり、こういった取り組みまで管理する事で他に行ってしまわないようにするという、経営上の工夫なんだろうと想像する。
この場合に、消費税法上の件とすべき課題が数点あるように思う。
①支払明細書による仕入税額控除を行うため、適格請求書の様式に合わせ、請求書の記載事項の要件を満たす事。及び相手方の確認を受けた事とみなす工夫をする事。
②外注費と給与の関係を問題のない状態にする事。
であるように思う。
①については、インターネット経由で拾ったものとしては、
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/invoice/invoice6b.pdf
を参考に、対応可能なんだろうと考えてるところ。
注意点としては、相手方への確認と承諾として、「送付後一定期間に連絡がない場合には、確認済みとします。」的な一文を加えておくことであろうか。
②については、ややこしい難題だ。
個人事業者と給与所得者の区分)
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
とあるわけで、これをどう捉えるのかが問題になりそうである。
過去の判例には、
①東京地判令和 3 年 2 月 26 日、②東京高判平成 20 年 4 月 23 日とあるようだが、いずれも納税者敗訴で給与課税認定を受けているようだ。
最近に事例によると、平成20年の判例を踏襲しているわけであるが、大学の先生の判例研究を引用すると、
上記アの「非代替性」、イの「指揮監督性」、ウの「危険負担」およびエの「材料等の支給」のすべての点について給与該当性が認められるとし、さらに X 社が A らについて公共職業安定所長から「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」の交付を受けていることや、A らが事業所得として申告を行ってきたことについては、所得税法の給与に該当するか否かは「所得税法の趣旨、目的に照らし、当該対価の性質から実質的に判断すべきものであり、当事者の主観的意図に拘束されるものではない」とし、本件支出金は外注費でなく、給与と判断した。
とのことで、個人事業主が所得税の申告をしている点や、雇用保険喪失が外注である根拠となりえないという事が明かされている。つまり、ア~エの基準を総合勘案した実質判定が必要という事で、事実認定の問題といえる。。
参照した論文では、インボイス制度の導入による見通しが書かれており参考になる。
適格請求書発行事業者の登録により、登録をしていない場合には仕入れ税額控除ができないし、外注先が消費税を納税する事が必ず必要となるので、明確になる部分はある。一方で、指摘にあるように、「危険負担」という点で、曖昧さが残り続けているように思う。
とはいえ、インボイス制度の導入により、片手落ちになる(消費税の控除というメリットが消える。)わけだから、こういった指摘は減るのではないかななんて、個人的な感想を付して終えることとする。
参考は、下記より。。
第248号 「給与」か「外注費」か―消費課税における事業者の判断基準 - Westlaw Japan | 判例・法令検索・判例データベースのウエストロー・ジャパン