いわゆる知的財産権と其れに関わる税務のあれこれ

 

以前、ある工場の工場長から質問をいただいた事がある。

 

職務上の報奨金の取り扱いは、どうしたらいい?

会社内で優れた成果を上げる人間に対して報奨金を支給する事で活性化したい。

という要望であった。

 

結局この件は、実現する事なく流れたようであるが、この場合の取り扱いは、支給する事についての法人税法上の損金性はなんら問題にならないが、共通して源泉所得税の問題が生じる。

 

この話のように、特許等を取得するに至らないような業務上の改善や発明、工夫について支給する場合には、①通常の職務の範囲内であれば給与所得、②通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるものは一時所得、③②の場合にその工夫や公安の実施後の成績等に応じて継続的に支給されるものは雑所得、という取り扱いとなっている。

 

通常は、表彰によって支給したとしても、①で支払って給与明細に上乗せすることで源泉徴収するケースが多いであろう。②の場合は、社外で万引き犯人捕まえたとか、マラソン大会入賞とかも含まれているのだろうか。。③の場合には、継続的に収益を上げている事を測定することが難しいが、一定のルールに則り支給するものであろう。

 

では、実際に特許権などの知的財産権が設定されるケースを想定して考えてみる。

一般的に、会社や大学などでは、それぞれの機関で設備などを利用して研究開発を行う。そのため、そこで発明した知的財産権は、使用者原始帰属制度といい、職務上の発明に係る特許を受ける権利を使用者(会社)に原始的に帰属させる制度を導入するケースがある。この場合、職務発明規定を改定したうえで、様々な報奨金を支給するケースがある。これらの報奨金についての源泉所得税の取り扱いがどうなっているのか、整理してみよう。

 

現行の所得税法基本通達では、①買い取るときの譲渡所得、②買い取った後に支払うときの雑所得として取り扱う事を定めている。しかし、使用者原始帰属制度に基づいて対処すると、本人が取得した特許を会社が買い取るものではないが、発明者の地位にもどついて支払われるものであるため、給与所得でもないし、一時所得でもない。従って雑所得となる。

 

この場合、源泉徴収は、発明者が特許権を有していれば工業所有権の使用料として源泉徴収対象となるケースは考えられるが、発明者である従業員が特許権を有していない本件では使用料とはいえず、源泉徴収をする必要がないと考えられている。

 

従って、使用者原始帰属制度に基づいて処理されているのであれば、源泉徴収不要という運用となる。

 

結構、複雑でややこしいですが、こういうケースもあるものですね。

 

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