雲散霧消

 

とあるクライアントからの報告。

 

〇月〇日に本店を移転(すぐ近所)して3階建ての物件を借ります。

 

1階は店舗に、2階は本社事務所と兼用オフィス、3階は住居スペースになります。。。

 

当該会社さんは、サービス業を何種類か行っている。そのサービススペースの拡張と統合、そして社長自身の活動の幅を広げるための、お引越しのようである。

 

問題なのは、1棟丸ごとの賃貸だという事とその利用の仕方にある。。

 

1階は、店舗は問題ない。

2階は、事務所機能の設置場所としては問題ないが、社長が個人的な活動を広げる為の活動スペースを一部兼ねている。

3階は、スタッフではあるが外注者である友人の居住スペースに賃貸するようである。

 

法人税務では、損金の額に算入する要件を満たすためには損金経理が必要となるが、事業関連性のないものについては「寄付金」として対処する事としており、低廉譲渡についてもこれを含むとしてい。という事で、2階と3階の取り扱いは、よく考えないと問題が起こりそうである。

 

2階については、社長からスペースの利用に係る適切な金額の家賃を頂戴しているのか、3階についても、当該スタッフから相当額の家賃を頂戴しているのかを確認する必要がありそうだ。

 

相殺や値引きを利用して実質を合わせたらよいと考えがちの方なので、面倒くさくても別個の経済取引として処理をしてもらえる様に交渉し実施していく。中々に大変な事である。

 

 

 

ビットコインの税務

 

今年も確定申告シーズンが近づいてきた。

会計業界は、年末調整、法定調書、償却資産税とバタバタしている時期であろう。

 

そんな中なのに、私は、年始から、焼き肉、焼き鳥、すき焼き、牡蠣と暴食の限りを尽くしているが、その罰があたったのか、下痢腹痛高熱と年始から転んでしまった。

 

承継や引継ぎが全くできないわが職場においては、属人的かつ高齢化によって、ますます頑固に、いまだに不遇が続いている。

 

さて、確定申告シーズンがやってまいりましたという事で、早速ビットコインの問い合わせが来ました。

 

昨年の年末に売却して4倍の利確定300万程度だそうで、なんといい話。ビットコインは、「雑所得」。譲渡原価と手数料の必要経費を計算して申告する。そんな事を思い出していた。

 

日頃触れないから忘れているが、譲渡原価の計算にあたって、取引単価を「総平均法」か「移動平均法」で計算する必要がある。この方法は、任意の方法を選択して届け出る必要がある。その名を、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」で、いずれかを選択するのかを申告期限までに提出する必要があり、届出を提出していない場合には、原則的評価方法である総平均法で処理したものとみなすようである。

 

取引量が多い案件ではないけれど、こういう案件に触れる機会があるのはありがたい。一方で、消費税の申告が面倒だから税理士事務所に丸投げしたい記帳代行が多い案件は、正直時間を取られるので対応したいと思わない。

 

今年も色んな人と出会えるといいなぁ。

 

いわゆる知的財産権と其れに関わる税務のあれこれ

 

以前、ある工場の工場長から質問をいただいた事がある。

 

職務上の報奨金の取り扱いは、どうしたらいい?

会社内で優れた成果を上げる人間に対して報奨金を支給する事で活性化したい。

という要望であった。

 

結局この件は、実現する事なく流れたようであるが、この場合の取り扱いは、支給する事についての法人税法上の損金性はなんら問題にならないが、共通して源泉所得税の問題が生じる。

 

この話のように、特許等を取得するに至らないような業務上の改善や発明、工夫について支給する場合には、①通常の職務の範囲内であれば給与所得、②通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるものは一時所得、③②の場合にその工夫や公安の実施後の成績等に応じて継続的に支給されるものは雑所得、という取り扱いとなっている。

 

通常は、表彰によって支給したとしても、①で支払って給与明細に上乗せすることで源泉徴収するケースが多いであろう。②の場合は、社外で万引き犯人捕まえたとか、マラソン大会入賞とかも含まれているのだろうか。。③の場合には、継続的に収益を上げている事を測定することが難しいが、一定のルールに則り支給するものであろう。

 

では、実際に特許権などの知的財産権が設定されるケースを想定して考えてみる。

一般的に、会社や大学などでは、それぞれの機関で設備などを利用して研究開発を行う。そのため、そこで発明した知的財産権は、使用者原始帰属制度といい、職務上の発明に係る特許を受ける権利を使用者(会社)に原始的に帰属させる制度を導入するケースがある。この場合、職務発明規定を改定したうえで、様々な報奨金を支給するケースがある。これらの報奨金についての源泉所得税の取り扱いがどうなっているのか、整理してみよう。

 

現行の所得税法基本通達では、①買い取るときの譲渡所得、②買い取った後に支払うときの雑所得として取り扱う事を定めている。しかし、使用者原始帰属制度に基づいて対処すると、本人が取得した特許を会社が買い取るものではないが、発明者の地位にもどついて支払われるものであるため、給与所得でもないし、一時所得でもない。従って雑所得となる。

 

この場合、源泉徴収は、発明者が特許権を有していれば工業所有権の使用料として源泉徴収対象となるケースは考えられるが、発明者である従業員が特許権を有していない本件では使用料とはいえず、源泉徴収をする必要がないと考えられている。

 

従って、使用者原始帰属制度に基づいて処理されているのであれば、源泉徴収不要という運用となる。

 

結構、複雑でややこしいですが、こういうケースもあるものですね。

 

www.nta.go.jp

 

飲食店の賄の話

 

お客さんとして飲食店を訪れる事は、私に限らずだれでもしている事であろう。

 

実際、仕事以外の場でも飲食店オーナーと話をする機会は多くあるものだ。それもそのはずで、参入障壁が高いとは言えなかったり初期投資が多くないから、創業しやすいという特徴はあるだろうし、食には多種多様な好みがあり、サービス業としての飲食店もあるから、奥深く淘汰されることも多くはない分野の仕事であるように思う。

 

そんな中、「賄い」の話は、誰しもどうなんだと考えたことはあると思うし、今回は税務的な取り扱いを検討してみたいと思う。

 

昔は、「賄いあり」なんて求人も普通にあったと思うけど、今は見ないな。丁稚奉公も無いからね。

 

さて、賄いとは、法人税の中だと、従業員に対して仕入れた材料を無償で使って食べるとかの家事消費とか買って食べるとか、色々あるけれど、「無償の経済的利益の供与」であるから「現物給与」として捉えられる事が一般的であろう。部外者などであれば、原価相当額を「広告費」とか「交際費」「寄付金」的な扱いになるのかな。

 

さて、現物給与として扱われるのであるから、問題となるのは「源泉所得税」が徴収されるという事である。それゆえに、取り扱いが複雑で、これが故に実務的にはお勧めし辛いように思う。

 

国税庁HPによると、源泉所得税として課税されないためには下記を満たさないといけないという。

 

役員や使用人に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。

(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。

(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。

なお、上記(2)の「3,500円」以下であるかどうかの判定は、消費税および地方消費税の額を除いた金額をもって行うこととなりますが、その金額に10円未満の端数が生じた場合にはこれを切り捨てることとなります。

 

 

これを鑑みtると、最大月額7,000円分の食事提供で、提供される側から3,500円を徴収していればOKという事になる。つなみに、「食事の価格」とは、弁当などでは購入代価だし、自分で作る場合には「原価」だそうだ。となると、結構計算が大変である。これが、賄い制度を作りつらい事に繋がっている。

 

なんか、日本は経済後進国のような状態にある中で、日々の食事もままならない人も増えつつある中で、世知辛い。

 

一方で、残業や宿日直を行うときに支給するときの食事は無料で提供しても給与課税しなくてもよい事になっているとのこと。

残業代が出ない時に食事提供しても有償になるし、根拠としては残業代が出ている必要があるだろう。

 

結局、残業代など支給する事はマイナスでしかない中小企業にとっては、いい事がない制度であるように思う今日この頃。

 

一人親方をお抱えのボスの話

 

さてさてさーて。

10月から始まるインボイス制度の対応を前にして、こんな相談をいただいた。

 

建設業のボスが抱える1人親方達に支払う際に、請求書を受けとる代わりに「支払明細書」を送る事があり、支払明細書によって仕入税額控除の根拠資料としたい。との事だ。

 

これは、受発注だけでなく、工数や人工計算が苦手なスペシャリストを抱える管理が出来るボスの場合には、仕事を請け、計算しその通知を持って請求書を受領した事にするという場合に生じるみたいである。

 

こういう発注の仕方も、一つの工夫であって、癖の強い職人を抱えるという事は、自由度を増やしたり、こういった取り組みまで管理する事で他に行ってしまわないようにするという、経営上の工夫なんだろうと想像する。

 

この場合に、消費税法上の件とすべき課題が数点あるように思う。

①支払明細書による仕入税額控除を行うため、適格請求書の様式に合わせ、請求書の記載事項の要件を満たす事。及び相手方の確認を受けた事とみなす工夫をする事。

②外注費と給与の関係を問題のない状態にする事。

 

であるように思う。

①については、インターネット経由で拾ったものとしては、

財務省資料「支払通知書のインボイス対応(イメージ)」

https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/invoice/invoice6b.pdf

を参考に、対応可能なんだろうと考えてるところ。

注意点としては、相手方への確認と承諾として、「送付後一定期間に連絡がない場合には、確認済みとします。」的な一文を加えておくことであろうか。

 

②については、ややこしい難題だ。

個人事業者と給与所得者の区分)

1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 

とあるわけで、これをどう捉えるのかが問題になりそうである。

 

過去の判例には、

①東京地判令和 3 年 2 月 26 日、②東京高判平成 20 年 4 月 23 日とあるようだが、いずれも納税者敗訴で給与課税認定を受けているようだ。

最近に事例によると、平成20年の判例を踏襲しているわけであるが、大学の先生の判例研究を引用すると、

 

上記アの「非代替性」、イの「指揮監督性」、ウの「危険負担」およびエの「材料等の支給」のすべての点について給与該当性が認められるとし、さらに X 社が A らについて公共職業安定所長から「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」の交付を受けていることや、A らが事業所得として申告を行ってきたことについては、所得税法の給与に該当するか否かは「所得税法の趣旨、目的に照らし、当該対価の性質から実質的に判断すべきものであり、当事者の主観的意図に拘束されるものではない」とし、本件支出金は外注費でなく、給与と判断した。 

 

とのことで、個人事業主所得税の申告をしている点や、雇用保険喪失が外注である根拠となりえないという事が明かされている。つまり、ア~エの基準を総合勘案した実質判定が必要という事で、事実認定の問題といえる。。

 

参照した論文では、インボイス制度の導入による見通しが書かれており参考になる。

 

適格請求書発行事業者の登録により、登録をしていない場合には仕入れ税額控除ができないし、外注先が消費税を納税する事が必ず必要となるので、明確になる部分はある。一方で、指摘にあるように、「危険負担」という点で、曖昧さが残り続けているように思う。

 

とはいえ、インボイス制度の導入により、片手落ちになる(消費税の控除というメリットが消える。)わけだから、こういった指摘は減るのではないかななんて、個人的な感想を付して終えることとする。

 

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不動産譲渡のあれやこれや

 

コロナも明けてコロナも5類に落ちると騒がれている。。

はて、5類、5類というが、5類とは、なんぞ。

正確に理解しているわけではなかったし、理解していなくても特段問題はなかったが簡単に、整理しておこう。

 

5類というのは、感染症法上の位置づけをいうらしい。

分類的には、1~5類と指定があるらしく、危険度は数値が小さいほど高いみたいだ。現在、新型コロナは、2類相当とのことで、結核並みとのことだが、これが5類に落ちるとのことで、一層活気が戻る可能性がある。

 

そんな情勢の中で、先行きを見越してなのか、民間での投資が活発化しているように思う。例えば、マンションの建設も、設備投資も、街の人でも、工場等の稼働状況も長いトンネルを抜けたような感覚といった感じで動き始めている。。

 

その波に乗ってか、私もマイホームの買い替え特例などの相談を受けた事から、内容の整理をしてみたい。一部、賃貸などがあると、居住用を純粋に計算しなければならない点がやっかいか。。

 

不動産の譲渡所得のマイホーム絡みでいえば、

①マイホームを売った時の特例(3000万円控除)

②特定のマイホームを買い替えたときの特例

が有名であろう。

次点で、マイホームではないが、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(3000万円控除)か。

 

各種の細かな要件は、置いておいて、①と②は、適用するときにどちらがおすすめになるのか、簡単に検討することとしよう。

 

まず、①は、租税特別措置法35条1項の適用となるわけであるが、こちらであれば、長期譲渡所得の金額から3000万円を控除する事になるわけだから、それよりも低ければ税額が0円となる。

 

一方で、②は、いわゆる課税の繰り延べであり、譲渡した年の所得金額は繰り延べられる。その後、買い替えた資産を譲渡したときに、繰り延べた所得額を加算して計算することになる。また、買い替える建物の面積要件などもあるので、有利選択の判定がむつかしい面がある。

 

相続した土地建物で価値がわからないものを3000万円で売却した場合には、繰り延べる必要性もないので、①のほうがよいであろうと思う。

一方で、相続した土地建物で価値がわからないものを6000万円で売却した場合には、①を適用しても譲渡所得がかなり大きく発生し、買い替えに伴う資金に影響が出る考えられる。また、買い替えた後の資産が5000万円であって、10年後に6000万円で売却したとすると、所得は、7000万円となる。結局のところ、後で沢山払う事には変わりない。。

 

となると、基本的には、売却価額が高すぎて、譲渡所得が高額となり、購入資金が捻出できない場合には、よいかもしれないが、通常は、①のほうがお得かなと思う。

 

(要件等をすっとばすした結果、かなり薄っぺらい記事となっている事をご容赦ください。。)

 

 

 

 

 

 

 

マンションの修繕決議の件と消費税の話

 

日経新聞に、マンションの修繕決議は、出席者過半数で可能にという見出しで大々的に法改正のことが記載されている。

 

私もマンション住まいなので直結してしてしまうわけであるが、老朽化対策のための緩和措置のようだ。

 

老朽化マンションの増加や修繕が行き届いていない物件の背景には、特別決議が必要であるためということで、出席者の過半数で決議可能とするようにしないと、修繕ができないという事が背景にあるようだ。

 

実際に、修繕が行き届かないなどの話はよく聞くことである。一方で、修繕という物が行き届かない背景は必ずしも全員が総会に集まらないからという事ではないと思う。

 

私の偏った意見かもしれないが、使い方の問題であったり、そもそもの計画が破綻している場合があるのではないかと思う。

 

この緩和の改正の真の狙いがどこにあるのか分からないが、専門家のいない状態で緩和することは、資産価値の維持のために早期の修繕を促しかねず、つまるところ資金不足に繋がり、より悪い状態のマンションが増加するのではないかなどど、勝手に懸念しているところだ。

 

マンションという物も、永遠に居住するようなものではないかもしれんなと思う。

 

ところで、消費税であが、「住宅の貸付の用に供しない事が明らかな建物以外の建物で、高額特定資産に該当するもの」は、居住用賃貸建物に該当するものとして、仕入れ税額控除の規定を適用しない旨の改正が、令和2年10月に行われた。

 

悪質な還付スキームを行う人々についにここまで万全な税制にしてしまったのが、理由である。

 

100%店舗貸付以外の建物は、無理とのことなので、シンプルになったといえばシンプルですから、そういう話のときは、バシッと単純に切り込めますね。